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死んでもなお、闇を彷徨うことを運命付けられた悲しき男、ジャック。
真っ暗な中、魂の安住の地も与えられず、
痛む足を引きずり泣きながら歩き続ける毎日。
あの絶対に魂をとらないという悪魔との約束が果たされた日から、
もう何百年経ったであろうか・・・。
ある日、ひさしぶりに闇に舞い戻った悪魔は、
遠い昔、自分をだまし生き永らえた男に出逢ってしまった。
すると男は悪魔のシッポをむんずと掴み、
すがりつくような目で訴え続けた。
ああ、悪魔よ。
ずいぶんと長い間、わしはひとり闇を歩いてきた。
そろそろ、わしの魂をとってはくれないだろうか?
なんと、虫のいい話!!
そなたは、この悪魔を騙してでさえ、
自分の魂にしがみついていたのではないか。
これからも、ずっとそのままでいるがいいさ。
それでも悪魔よ。
わしはもうずいぶんと長い間、この闇を彷徨ってきた。
お前を騙した償いは、もうとおに終わったと思うのだが?
なんとか、この私の魂を取って行ってはくれないものだろうか?
お前が「うん」と言うまで、わしゃ・・この手を離さぬぞ!!
そう言うと男は、しきりに振り払おうとする悪魔のシッポを両腕で絡め、
飛ばされないようにと必死にしがみついてきた。
シッポを掴まれてしまった悪魔としちゃ、たまったもんじゃない。
悪魔は男に負けまいと、必死でシッポを振ったり飛んでみたりしたのだが、
ますます強くしがみつく男を振り払うことが出来なかった。
それよりもなによりも、
その男のしつこさにとうとう根負けしてしまったのだった。
お前との約束は約束だから、
このままでは私にもどうしてやることも出来ない。
だから、もうひとつ新しい約束を交わすことで、
あの約束の呪いが解けるようにしてやろう。
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