ある寒い日の朝、やっと顔を出したお日さまの光に、
今まで閉じていた羽をこすり合わせながら、
小さな虫は言いました。
ねぇ・・・。
こんなに寒い朝なのに、
あなたはどうして咲いているの?
ねぇ・・・。
仲間はすべて茶色くて、もう誰も立っていないのに・・・
あなたはどうして立っているの
怒りもなく 意地もなく
ただ 微笑むように咲いている
ねぇ。。。
ねぇ・・・ どうしてあなたは ひとりなの
すると、今まで何事もなく咲いていた花は、
ほんのちょっと背を伸ばし、小さな虫に言いました。
私は、独りでもなく意地でもなく
ここに咲いていられることを喜びに、
ここに立っているんだよ
足元で茶色くなって倒れた仲間たちは、
ただそこにあるのではなく、
私の根元を、守っていてくれるんだよ。
春が来て ちゃんと新芽が出るまで
見守るのが私の使命
春が来て、新芽たちが生まれ来たら
私の役目も終わるのさ
私がいちばん悲しいのは
春になっても・・・
待てど暮らせど 新芽たちが出てこないこと
そしたら私のすべてをかけて
新しい種を作り うんと遠くまで風に乗せ
新しい命を守るんだ
そのとき私はこの茶色の
生きた証もすべて無くしてしまうんだ
きっと・・・
きみと出逢えたことさえも、すべて忘れて
・・・しまうんだろうなぁ〜。。。
ねぇねぇ。お花さん。。
どうしたら新芽は出てくるの?
ぼくにお手伝いできることは何かあるぅ?
いえいえ 小さな虫さん。
これは時の流れが決めること
とても大きな、自然と言うときの流れには、
だぁれも逆らえないんだよ。
小さな虫さん。
あなたは、あなたのための一生を
精一杯生きなさい。
お花さん・・・ それでも僕は・・・。
小さな虫さん、ありがとう。
あなたの心がとてもうれしくて、
わたしには、それで十分なくらい幸せです。
けれども季節が彷徨って、あなたの助けを必要とするときが来たならば、
その時は、どうぞ・・・
どうぞチカラを貸してくださいな。
私の身体が千切れる前に、立派な種が出来るよう・・・。
小さな虫と季節はずれの花は、
互いにかばいあい、春の訪れを待ちました。
そして、季節はめぐり・・・。
その小さな虫と季節はずれの花は、
今、どうしているかは分かりませんが・・・。
時折、こんな花を見かけます。
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